投稿コーナー2

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とりあえずこれから復活させてみました

つとむ - hkr

2017/01/07 (Sat) 00:01:09

静かな診察室の昼休みの午後、里沙を含む歯科スタッフたちは今始まっているテレビドラマや美味しいレストランの話題でワイワイと盛り上がっていた。
一方、歯科医師の友里は午後から診察するカルテの確認をしていた。
普段は今日の診察スケジュールの内容を見るが、同時に三日後の診察スケジュールも軽く目を通していた。
その日のページには目立つようにインデックスを貼ってあり、何か重要なことがあるかのようであり、友里は今か今かと待ち遠しい気持ちになった。その内容は恋人である朋樹の歯を検診する日程であった。
必ず治すからね。朋くん。なるべく痛いようにはしないけど・・・。
友里は心の中でつぶやいていいた。

何事もない日常の診察室から泣き叫ぶような声が近づいてきた。
「いやだぁ、いやだぁ!怖い〜!」
「つとむ、今日歯医者に行くって言ったでしょ。」
玄関前でつとむと呼ばれた子供が母親の手を払いのけようとするが、母親が無理やり引っ張り出し、歯科の受付室へ入らせた。
受付のスタッフが急いで受付室へ駆け込んだ。
「こんにちは。」
受付スタッフが挨拶をすると
「こんにちは。今日が初めてです。ここの歯医者さん。評判がいいと聞きましたのでお願いします。」母親が保険証を受付スタッフに手渡す。
「冨田つとむくんですね。少々お待ちください。」
つとむは観念したかのように泣き叫びはしなかったが、顔がかなり緊張していた。
ちょうど昼休みの時間が終わり、診察室から心地よいボサノバ音楽が流れ始めた。
「や、やっぱり、こわいよぅ・・。こ、こんどにしよぅ・・・。」
つとむは涙目で声を震わせながら母親に訴えかけた。
「だめ!つとむの歯がダメになっちゃうからね。」
待ってから5分後、受付スタッフが診察室のドアを開け、同時につとむの体がびくんと動き出した。
「冨田つとむくん、冨田つとむくん。診察室1番へどうぞ〜。」
「ほら、つとむ。いくよ。」

Re: つとむ - hkr

2017/01/14 (Sat) 21:52:52

つとむにとって診察室のドアは地獄の門が開かれるような感じであり、診察室には歯科医と呼ばれる鬼が虫歯になった歯をドリルでお仕置きするという怖いイメージを持っていた。
つとむはうつむきながら診察室へ向かい、落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回していた。
「こちらにお掛けになってお待ちください。」
スタッフは笑顔で声かけるが、つとむはブルブルと震えたままユニットチェアに横になる。今でも心臓が飛び出そうなくらい、鼓動が高鳴っていた。
「先生をお呼びしますので少々お待ちください。」
先生・・・、いったいどんな人なんだろう・・・。鬼みたいに怖いのかな?ガミガミ怒る人なのかな?
つとむは心の中でつぶやく。
どんな、人だろう・・・。

歯医者の先生は、「男性。痛いことをする。怒る。怖い人。先生は脂ぎったおじさん。」など、つとむは色々と想像してみた。こんな人から治療されると思ったつとむは恐怖のあまり帰ろうとしていた。
「や、やっぱり、帰る〜。」
「もうすぐ先生達が来るからここで待ってなさい。」
母親が諭している中、衛生士と友里はつとむ達がいる一番の診察室へ向かい、足音がさらに近づいてきた。
「おまたせしましたー。」
右側から若い女性の声が聞こえ、つとむは声に反応し顔を右に向けた。若い女性はゆっくりとつとむの右側に座りだした。

Re: つとむ - hkr

2017/01/21 (Sat) 20:28:37

「つとむくん。こんにちわ〜。立花友里せんせーです。」
満面の笑みで子供をあやすような声で友里はつとむに挨拶した。
「こ、こんにちわ・。え・・・、お・、おんなの先生・・・?」
「私、歯医者の先生だもん。」
唖然としたままつとむは友里をじっと見つめていた。半信半疑ではあるが、ホッとした安心感が芽生えた。

優しそう・・・。キレイな人だなぁ・・・。

「今日はどうしたのかなぁ〜?」
「は、が・・・、・・・ぃ、よ。」
「つとむくん、先生に聞こえるように大きな声を出してねぇ〜。」
「歯が・・・・痛い・・よ・。」
普段の声より小さめではあるが、精一杯の声であった。極度の緊張のためか声が震えていた。
「うん、ありがとう。つとむくん。あっ、私のことお姉ちゃんって言っていいからね。」
「う、う・・ん。おねえちゃん・・・。」

「じゃ、つとむくん。今からつとむくんの歯を診ますから、椅子倒すね〜。」
ウィーン・・
静かな診察室の中で、治療代が音を立てて倒れていく。
椅子がどんどん倒れ、真上には歯科用のライトがつとむを睨みつけるように備えている。

うう、やっぱり怖いよ・・・。

右側から友里の顔がにゅっと迫り、つとむは緊張した面持ちで友里の顔をじっと凝視する。

つとむ - hkr

2017/03/19 (Sun) 23:16:02

つとむは緊張した面持ちで友里をじっと見つめていた。艶やかな黒い髪は左右に分けて結び始めた。結び終わると、つとむを見上げて微笑んだ。つとむの右側にはイメージしていた怖い歯科医師ではなく、優しいお姉さんの雰囲気を持った友里が椅子に座っていた。
「今からつとむ君の歯を一本一本診ていきますね。では美香ちゃん補助お願いね。」
「はい、先生。」
左側の椅子には美香と呼ばれた衛生士が座った。美香は衛生士の専門学校を卒業したばかりの新人であり、緊張した面持ちであった。つとむの右側からカチャリカチャリと金属音が聞こえた。
「はーい、お口開けてね~。ア~ン。」
つとむは恐る恐る口を開けた。
「右上からいきます。E・・。」
ミラーでじっくりと観察する。遠心面に黒い穴が顔を覗かせていた。探針の尖端が獲物を狙う蛇の鎌首のようにつとむの虫歯をクリクリと突き出す。
「アッ、アアァー!」
つとむは足をばたつかせながら、悲鳴を上げた。
「E遠心面にC2・・。」
つとむの悲鳴にも物怖じせず、友里の声は落ち着いていた。
「痛かったね、つとむ君。虫歯ちゃんが奥にいたね。」
「あぅ、お姉ちゃん、痛かったよ・・・」
「ゴメンね。痛みを確認しないといけないからね。次の歯いくよ。アーン。」
つとむは涙目になりながら、恐る恐る口を開けた。

つとむ - hkr

2017/03/31 (Fri) 01:20:39

「D、エア。弱めで。」

シュゥゥゥ・・・

「あっ、あぁぁ・・あぁっ・」
つとむの身体全体が小刻みに震え始めた。もう早く終わってほしいと友里や美香に目で訴えかけた。
「D、咬合面C2で。次、行きます。C、B共に斜線・・・。」
友里は歯式を淡々と読み上げる。
「Aは・・。」
前歯には小さな虫歯が目立つように顔を覗かせていた。友里は再び探針を構える。
(ひっ・・・!)
つとむは恐怖のあまり強く眼をつぶった。

カリッ、カリカリ、カリッ。

痛みは感じなかったが、カリカリと擦る音が怖く顔が引きつっていた。
「つとむ君。痛い?」
「う、ううぅん。」
つとむは顔を横に振りながら痛くないと友里に合図を送る。
「右上A近心面、左上A近心面共にC1で・・。B、C斜線・・・。次は・・・・。」
友里の声が途切れ、つとむは恐怖を感じた。
(あっ!お姉ちゃん!こ、ここは止めて!)
DとEの間に黒い穴が顔を覗かせている。探針がその穴に差し込まれ、何かを探すように蠢く。
「ゴメンね。」

クチュ、グジュ、グチュグチュ・・

「アーッ!アアァアーッ!」
悲鳴は診察室に空しく響き渡る。探針が容赦なく虫歯を突き出す。

クチュ、クチュ。ニュルッ。

探針の先から食べ残しのワカメのかけらが掻き出される。腐臭を放つ緑の物体は探針の先で器用に絡め取る。
「ウッ・・・。」
経験浅い新人の美香は思わず声を出したまま顔をしかめたが、一方、友里は眉一つ動かさずつとむの歯をじっと診ていた。
「吸引・・。」
友里はゆっくりと落ち着いた声で美香に手短に指示を送る。美香はすぐにバキュームに持ち替え、ヌルヌルとしたわかめのかけらをサッと吸引した。
こんな事で驚かないでねと言わんばかり美香に対し無言で視線を送る。友里の眼を見て察知した美香は申し訳なさそうな顔に変わった。
「申し訳ありませんでした。立花先生・・。」
「これから気をつけてね。」
(ゴメンね。つとむ君・・。ここの虫歯はかなり痛いと思うからね・・。)

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